2014年6月8日日曜日

Total Recall (2012)

トータル・リコールはフィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』(We Can Remember It for You Wholesale)の2回目の映画化作品。
今世紀の終わり頃の地球を舞台としていて、ビルから横にせりだして、さらに下方に伸びているようなオーバーハング構造の建物が建ち並ぶ風景が印象的。論理的に考えれば貧しいスラム街が、なぜわざわざ不安定なオーバーハングを採用しているのか納得感がありませんが、チェイスシーンに立体感がでるし、落下のスリルも味わえるので良いアイデアです。
ドアとシートが一体化している車のデザインには、「なるほど、それなら乗り降りしやすい」と納得してしまいましたし、ハンドルが運転席から助手席に瞬時に移動するギミックも、ありそうでなかった便利機能です。
部屋の中を探るためにセンサー弾を撃ち込む銃や、ガラスに触ると映像が浮かぶ体内埋蔵型携帯電話、発光するイレズミといった小物も楽しめました。
ただ、期待していたリコール社による夢販売ビジネスが物語にほとんど影響しなかった反面、代わりにメインガジェットとして登場した地球貫通超特急「フォール」は酷いです。地球の核の外側は6000度の液状金属で流動しています。大気の薄い高空をロケットで移動するほうが遙かに安く安全なのに、わざわざトンネルを掘る理由が見あたりません。おまけに落下中の列車内には重量があり、核を通過するときに反転する描写も、子供の教育に良くないので頼むから上映をやめてほしいと頼みたくなるレベルです。正しくは、自由落下中の列車内は無重量になります。よい子は注意してください。

余談ですが、物理現象の描写のひどさという点では、リアルなSFとして認知されている「ゼロ・グラビティ(Gravity)」で無重量空間であるにも関わらずジョージ・クルーニーが手を放すとサンドラ・ブロックとの距離が離れていくシーンのほうが遙かに罪深いです。確かに衛星軌道上でも地上と変わらないぐらいの強さで地球からの引力は働いてますが、遠心力と釣り合っていますので、互いに押さない限り距離は離れないのです。物理学者たちはしっかりこの矛盾を指摘してますが、広まりませんね。劇中に「実際にはこうなりません」と脚注を表示しない限りDVDは発禁にしたほうがよいです(笑)。


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